強さと正義への憧れ、勇者は孤独という固定観念
子供の頃、憧れの対象は専らテレビの中に存在しました。最初に心を惹かれのは「タイガーマスク」です。辻なおき作画・梶原一騎原作のプロレス漫画をアニメ化し、1969年〜1971年に放送された作品です。孤児院「ちびっこハウス」で育った伊達直人が、悪役レスラーと死闘を繰り広げるストーリー（ざっくり過ぎるやろ！）。「虎だ、虎だ、お前は虎になるのだ！」のイントロで始まる主題歌に心を鷲掴みされましたね。でも、このアニメが好きになった理由は別の点にあるのです。
タイガーマスクの魅力
・主人公・伊達直人の生い立ちが、孤児院で育った「みなしご」という設定で、孤独で影があり哀愁漂うナイスガイ
・悪役レスラー養成機関「虎の穴」が、実在の「スネークピット〈蛇の穴〉」（ビリー・ライリージム）とシンクロ
・ミスターノーやエジプトミイラといった悪役と共に、アントニオ猪木やジャイアント馬場ら実在のレスラーが登場
・エンディングテーマ曲「みなしごのバラード」の悲しい調べと歌詞が、アニメを見た後の子供心にグサっと刺さる
「強さ」への憧れの系譜
私が次に虜になったのが、高森朝雄（梶原一騎）原作・ちばてつや作画の漫画をアニメ化し、1970年〜1971年に放送された作品「あしたのジョー」と、1980年〜1981年に放送された「あしたのジョー２」でした。ここでも主人公は施設で育った設定の矢吹ジョー。東京・山谷のドヤ街に姿を現わすところから始まる。アル中の元ボクサー・丹下段平、ライバル・力石徹ら登場人物が個性的かつ魅力に溢れたキャラクター揃いでした。キーワードはやはり「孤独」と「哀愁」です。
あしたのジョーの魅力
高度経済成長期だった当時の日本の時代背景もあるのでしょう。警察に逮捕され少年鑑別所に送られた矢吹ジョー宛に、丹下段平が送った「あしたのために」の書き出しで始まるハガキ。地獄のような減量苦に耐え抜き、ジョーとの対戦に臨む力石。ウルフ金串やカーロス・リベラ、金竜飛、ハリマオ、ホセ・メンドーサとの闘い。財閥の令嬢・白木葉子の告白を振り切り、ホセと闘いに向かうジョー。胸にジーンとくる数々の名場面が散りばめられた珠玉の作品だと思います。
・衝撃的だった力石徹の死。漫画を連載していた講談社６階講堂で葬儀が執り行われたことはあまりにも有名
・「サンドバッグに浮かんで消える、憎いあんちくしょーの顔めがけ、叩け！叩け！叩け！〜」が痺れますね
・心に刺さる名言の数々。矢吹ジョーがのりちゃんに対し発したこの言葉「そこいらの連中みたいに見てくれだけの不完全燃焼とは訳が違う。ほんの瞬間にせよ、眩しいほど真っ赤に燃え上がるんだ。そして、後には真っ白い灰だけが残るんだ」が強烈に記憶に残っています。のりちゃんがジョーへの想いを断ち切った瞬間でもありました。
空手バカ一代の魅力
昭和20年に特攻隊から復員した主人公が、山籠りの修行を経て戦後初の全日本空手選手権に出場し優勝。その後、闘牛との闘い、手刀によるビール瓶切り、アメリカ人との修羅場を潜り抜けた三段蹴り…といった超人的な強さに憧れました。また「人間、こういう時にとかく自分を偉く飾り付け、神棚に乗りたがる〜実戦の道だ。死ぬ時は戦う男として死ぬ道だ」といった主人公の呟きも子供心に刺さりました。アニメは梶原一騎、つのだじろう原作で1973年〜1974年に放送されました。
・空手家・大山倍達の半生を描いた伝記的作品との触れ込みでしたが、「9割以上、梶原の創作だった」との証言も
・漫画は「超人追求編」「無限決闘編」「悲願熱涙編」「昭和武蔵編」「空手巌流島編」「世界制覇編」の6部構成
・高弟であるケンカ十段・芦原英之、極真の猛虎・添野義二、極真の龍・山崎照朝ら実在の人物を登場させた群像劇
・この物語は、冒頭で「これは事実談であり、この男は実在する」という設定で始まり、最後は「私の目の黒い限り、極真空手の永久不敗を読者諸君に誓います。大山倍達54歳、ますます元気です」というメッセージで幕を閉じました
実在するヒーロー
漫画やアニメなどフィクションの中だけで存在したヒーローは、8歳の頃には実在の人物が憧れの対象になっていきました。キーワードは「強さ」と「正義」。タイガーマスクからプロレスリング、あしたのジョーからボクシング・キックボクシング、空手バカ一代から極真空手といった具合です。では、実在のヒーローは次回の投稿で。
